福井商業高校
「目標はいつでも全国制覇」

「きちんと声を出せ!」。福井商の練習場にはいつも、北野尚文監督の大きな声が響いている。マネジャーの中井康貴君(3年)は「常に気が抜けません」と小声で話す。

 一方、練習中、しばしば行うミーティングでは「肩を柔らかくして投げるよう意識して練習すること。これは中谷(圭佑投手=2年)が得意とするところだな」と、ごくさり気なく選手をほめる。

 選手のことを語るときの北野監督は、いつもうれしそうだ。
「天谷(宗一郎選手=3年)は夏の甲子園以降、目つきがより真剣になった。

南部(巨宏選手=3年)は夏休み、人一倍必死で練習していた。

竹内(祐司選手=3年)はやる気があり、打てば響くような人間。岡本(広選手)は2年生ながら落ち着いていて頼れる。

渡辺(利克選手=2年)は肩が強く、ガッツがある。稲垣(充選手=2年)の守備は近年見た選手の中でも秀逸」――、と技術面から性格まで知り尽くした答えが即座に返ってくる。

 気を引き締めさせる一方で、常に選手のいいところを見つけてほめることを忘れない。厳しい練習も楽しくできるよう選手をその気にさせたうえで、技術的には要所で的を得た助言をする。選手は可能性を信じるから監督の指導を一言も聞き逃すまいと、懸命にメモを取りながらミーティングに参加するなど、自分から進んで努力し、その結果、持っている素質を存分に開花させる――。

この「北野マジック」こそ、公立校であり私立高にくらべ決して有利ではない福井商が、何度も甲子園出場を果たせる秘密といえる。

 選手としては比較的小柄で一見普通の高校生。闘志をむき出しにはしないが、やる気と努力は人一倍。そんな福井商の選手は、福井人気質を体現しているように見える。

 「目標はいつでも全国制覇」。大きな夢を抱きながら黙々と練習する姿をみていると、紫紺の大優勝旗を北陸路に持ち帰る日が、近い気がしてならない。 【阪本麻記子】


(毎日新聞2001年2月7日から)
   戻る