|
1988年夏の甲子園。福井商は、この大会で春夏5季連続の甲子園出場を果たしていたが、初戦敗退が続いていた。 |
|
北野尚文監督は、このころの気持ちについて、「スター選手がいないうちのチームでは、甲子園に出るのが精いっぱいなのではないかという気弱な気持ちが生まれてきた」と正直に話す。 |
|
この大会のメンバーも、特にずば抜けた能力の選手はいなかった。しかし、1回戦の東陵(宮城)戦では、2点をリードされながら七、八回に本塁打やスクイズで計3点を入れて逆転。久しぶりに初戦を突破した。 |
|
そして、2回戦では、超高校級の速球が持ち味の前田幸長投手(現中日ドラゴンズ)を擁し、優勝候補にも挙げられていた福岡第一(福岡)を迎えた。 |
|
福井商は追いつ追われつの大接戦を展開。エース・吉沢孝治投手も八回まで相手に三塁を踏ませない快投。 |
|
試合は1―1で延長に入り、十二回表に2点を奪われてもその裏に同点に追いつくなど白熱した攻防を繰り広げた。十三回に吉沢投手の168球目が、深い守りの左翼手の前にポトリと落ちて決勝点となり、3―4で試合には敗れた。3時間13分の熱戦だった。 |
|
試合直後、吉沢投手が「気持ち良かった。150点の出来です」と語れば、北野監督も「いい試合だった。悔いはない」と言い切った。 |
|
体は小さく、足も速くないなど才能に恵まれているとは言えない選手ばかりのチームが、二つの試合で見せた輝き。 |
|
北野監督は「初戦敗退が続いたのは、選手の資質のせいじゃないということに気付かされた。また、勝ち負けのみが大事なのでもない。 |
|
選手が力を出し切り、満足できる試合をするにはどう指導してやればいいのかということを、あの甲子園は思い出させてくれました」と話す。 |
|
福井商がチームの持ち味を思い出し、自信を取り戻した大会だった。 |
|
【阪本麻記子】 |
|
(毎日新聞2001年2月18日朝刊) |